「アブラナ」は無駄なところがないスーパー植物

 前回の投稿(ウメとサクラ、なぜ開花時期が違うのか?)で、春の訪れを知らせる植物としてウメとサクラを挙げましたが、春になると一面黄色の花を咲かせる植物があります「菜の花」です。

菜の花とは

 通称「菜の花」はアブラナ科アブラナ属の花の総称です。ナタネ、カブ、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー、カラシナ、ザーサイなどがアブラナ属の植物ですが、ここではこの時期、畑に一面黄色の花を咲かせるアブラナを取り上げます

菜の花畑
菜の花畑

なぜ、アブラナは無駄のない植物なのか?

 アブラナを栽培する理由は、大きく4つあります

  1. 観光資源(景観植物)
  2. 食用資源
  3. エネルギー資源
  4. 肥料

1. 観光資源(景観植物)

 先述したとおり、早春になるとアブラナは畑一面に黄色い花を咲かせます。春の訪れを視覚で知らせてくれるとともに、その姿はとても美しく、楽しげな気持ちにさせてくれます。菜の花畑の観光地がじゃらんさんで特集としてまとめられていますので、ぜひこの時期お近くの菜の花畑を訪れてみてはいかがでしょうか?(【全国】黄色い絨毯のような絶景”菜の花畑”27選!まるで絵本の中みたい♪

2. 食用資源

 アブラナは通常、蕾の状態で食べます。市場には蕾の目立つ頭頂部をまとめたもの(束タイプ)と蕾と脇芽を掻き取って袋詰めにしたもの(袋タイプ)の2つが主流となっています。また、菜種油(ナタネ油)としても活用ができます。植物学的にはナタネという植物は存在せず、アブラナや西洋アブラナの中で搾油用に子実を利用する作物の名称です。菜種(ナタネ)は菜類(アブラナ)の種子という意味で使われていました。菜種には多くの油が含まれており、絞ることによって菜種油を作ることができます

3. エネルギー資源

 上述したように、菜種から菜種油を作ることができ、それらは収穫された菜種から学校給食や家庭で利用されます。その際、廃食油が発生しますが、その油からバイオディーゼル燃料を生成し、自動車や農業用機械の燃料として使用する取組が行われています(関東農政局 – 菜種のエネルギー利用(菜の花プロジェクト)の取組)。

4. 肥料

 アブラナは畑の肥料としても活用されます。活用方法は主に2つあります。

  1. 葉っぱ、茎などをそのまま畑にすき込み緑肥とする

     「花が咲いたアブラナ畑の場所にしばらくすると違う植物が植えられて栽培されている」ところを見かけた方もいるのではないでしょうか?アブラナはそのまま畑にすき込むことで土壌の肥沃度を高めることができ、次に栽培する作物の成長を助けることができます(他にも効果があるのですが、詳細は次の投稿にて)。
  2. 菜種油を作る際に発生する絞りカスを肥料とする

     ホームセンターなどで「菜種油粕」などの名前で有機質肥料として販売されています。菜種油粕の肥料の特性はまた別の投稿で詳しくまとめてみようと思います。

まとめ

 上記の通り、アブラナは無駄なところがない植物ということが言えると思います。蕾は食べることができ、菜種は油を搾り取ることができ、油かすは肥料として使用することができ、挙げ句にそのまま畑に残ったアブラナは緑肥として活用ができる。これほど無駄のないスーパー植物があることによって、私たちの生活も豊かになってきたのですね。

参考文献

  1. 田中修. 植物のひみつ. 中公新書,2018.
  2. アブラナ – Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%8A. 2020/3/17アクセス.
  3. じゃらん ニュース. 【全国】黄色い絨毯のような絶景”菜の花畑”27選!まるで絵本の中みたい♪. https://www.jalan.net/news/article/145509/. 2020/3/17アクセス.
  4. 東京多摩青果 株式会社. 菜の花. http://www.tamaseika.co.jp/wp/wp-content/uploads/2013/02/2%E6%9C%88%E8%8F%9C%E3%81%AE%E8%8A%B12.pdf. 2020/3/17アクセス.
  5. のらのら. ナタネはどんな植物か. http://www.ruralnet.or.jp/syokunou/200409/09_natane.html. 2020/3/17アクセス.
  6. 関東農政局. 菜種のエネルギー利用(菜の花プロジェクト)の取組. https://www.maff.go.jp/kanto/kihon/kikaku/biomass/ktrenraku/foram/morishita.html. 2020/3/17アクセス.

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