ウメとサクラ、なぜ開花時期が違うのか?

 春の訪れを知らせる、ウメとサクラ。どちらもピンクや白色の花を咲かせ、情緒ある姿を魅せてくれます。ウメとサクラの大きな違いを一つ挙げるとすると「開花時期」があります。

サクラ
筆者が撮影したサクラ

ウメとサクラ、なぜウメのほうが先に咲くのか?開花時期の違い

 品種によって開花日は異なりますが、基本的にはウメはサクラよりも先に咲きます。2020年、東京においてはウメの開花日は1月27日(気象庁)で、サクラの開花予定日は3月13日となっています(3/13時点で気象庁から開花は発表されていませんでした)。なぜ、ウメとサクラはウメのほうが先に咲くのでしょう?

 先に咲く理由として思い浮かぶこととして「ウメのほうがサクラよりは低い気温で花を咲かせるから」ということが思い浮かぶかもしれません。ほぼ正解ですが、一点、冬眠の深さも関係しているのです。

ウメはサクラよりも深い眠りについている

 ウメもサクラも春に開花しますが、実は前年の夏からツボミは形成されています。「夏にツボミを作るのに、なぜ秋に咲かないのか?」という疑問が生まれます。植物は種(子孫)を残すために花を咲かせ結実させますが、ウメなどの花木が秋に花を咲かせ、結実するまでに3ヶ月かかるとすると、真冬に種を作り上げなければなりません。それはあまりに酷です。そのため、ウメやサクラは夏にツボミを作っても秋には咲かせずに越冬し春に咲かせるのです。では、どのように越冬する仕組みを持っているのでしょうか?

 ウメやサクラは、夏にツボミを作り秋に夜が長くなってくると、葉でアブシシン酸(ABA)が生成され芽に送られます(実際には日長以外に乾燥や低温などのストレスにもよると言われています[日本光合成学会 – アブシシン酸])。ウメやサクラはこのアブシシン酸によって越冬芽を作り、休眠状態となります。そしてこのアブシシン酸は低温にさらされることによって、徐々に分解され量が減少し眠りから目覚めます。冬の低温によって眠りから目が覚め、暖かくなるにつれて、ジベレリンという物質が作られて開花するのです(ジベレリンについては別途)。

 ウメもサクラもアブシシン酸が作られますが、その量が違うために目覚めるタイミングが違うのです。ウメのほうがアブシシン酸の量が少なく、眠りが浅いために開花時期がサクラよりも早いのです。

 植物におけるアブシシン酸の性質を利用して、穂発芽しにくい農作物の効率的な開発に役立てる研究などが行われています。

参考文献

  1. 田中修. 植物のひみつ. 中公新書,2018.
  2. 気象庁. うめの開花日 (2019年-2020年). https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/phn_000.html . 2020/3/13アクセス.
  3. 日本光合成学会. アブシシン酸. https://photosyn.jp/pwiki/index.php?%E3%82%A2%E3%83%96%E3%82%B7%E3%82%B8%E3%83%B3%E9%85%B8 . 2020/3/13アクセス.
  4. 岡山大学. 植物ホルモン「アブシジン酸」が働くための新たな仕組みを発見-穂発芽しにくい農作物の効率的な開発に期待-. https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id545.html . 2020/3/13アクセス.
  5. 理化学研究所. 劣悪環境に応答する植物ホルモン「アブシジン酸」の応答経路を解明. https://www.riken.jp/press/2009/20090922/ . 2020/3/13アクセス.
  6. 理化学研究所, 科学技術振興機構(JST), 東京大学. 劣悪環境に応答する植物ホルモン「アブシジン酸」の応答経路を解明. https://www.jst.go.jp/pr/announce/20090922/index.html. 2020/3/13アクセス.
  7. 日本植物生理学会. 狂い咲きについて. https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1104. 2020/3/13アクセス.